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ROPE BURNS

昨日(映画の日)、嫁さんの希望で「ミリオンダラーベイビー」を観に行ってきました。
アカデミー賞4部門受賞、出ている俳優はみんな好きだし、まあはずれではないだろうと軽い気持ち(意外な結末とは聞いていたけれど、アメリカ映画だし)で見たんですが、見事にやられました。

こちらのガードが甘かったので衝撃もすごく大きかった。
ボクシングのサクセスストーリーではなく、でもただのお涙頂戴、感動ものでもありません。
この作品は「ROPE BURNS」という短編集の中の一話、原作者は50歳近くになってボクサーを志し、トレイナー、カットマンを経て70歳でこの小説を書き上げ、72歳、心臓病で死去。
だから、こんなにせりふの一つ一つが胸を打つのだろう!!

トレーラー育ちの不遇な人生の中で、自分がひとつだけ誇れるのは、ボクシングの才能だけ。その思いを胸に、ロサンゼルスへやって来た31歳のマギー。彼女は、名トレーナーのフランキーに弟子入りを志願するが、フランキーは「女性ボクサーは取らない」と言ってマギーをすげなく追い返す。だが、これが最後のチャンスだと知るマギーは、フランキーのジムに入会し、黙々と練習を続ける。そんな彼女の真剣さに打たれ、ついにトレーナーを引き受けるフランキー。彼の指導のもと、めきめきと腕をあげたマギーは、試合で連覇を重ね、瞬く間にチャンピオンの座を狙うまでに成長。同時に、ふたりのあいだには、同じ孤独と喪失感を背負って生きる者同士の絆が芽生えていく。だが、彼らは知らなかった。その絆の真の意味を、試される時が来ることを……。

「これはシンプルなラブストーリー、父と娘のラブストーリーだ」。そう語るイーストウッドは、幼いころに唯一の理解者だった父を亡くしたマギーと、娘とのあいだに修復不可能な過去を持つフランキーが、おたがいの中に「家族」を見出していく過程を細やかに描写。フランキーから「モ・クシュラ」という新しい名前を与えられたマギーの人生が、試合に勝つことではなく、フランキーに愛されることで輝きを帯びて行く様を、繊細なエピソードの積み重ねを通じて丁寧に描き上げていく。そして、エキサイティングなファイト・シーンの後に用意された衝撃の結末。提示されるのは、あまりにも悲しく、あまりにも切ない愛の形。自分のすべてを投げうって、マギーのたったひとつの願いをかなえようとするフランキーの思いは、イーストウッド自身が手がけた心揺さぶる音楽にのせ、私たちの心の奥深く、最も神聖な場所へと運ばれ、生涯消えることのない感慨となって残り続けていく。

シンプルなストーリーは、役者の演技によって重厚な輝きを放つ。そのことを誰よりも知っているイーストウッドは、自らフランキーに扮してカメラの前に立ち、重い十字架を背負った男の意地と苦悩、そして、マギーを育てることに贖罪(しょくざい)の機会を見出していく男の生き様を、物の見事に演じきり、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。そんなイーストウッドに勝るとも劣らない名演を見せるのが、『ボーイズ・ドント・クライ』のオスカー女優ヒラリー・スワンクだ。3か月のトレーニングを経て、マギー役に挑んだ彼女は、全編吹き替えなしでボクシング・シーンに挑戦。その肉体的なチャレンジもさることながら、ボクサーというタフな役柄の中に、けなげさ、愛らしさが滲み出る堂々たるヒロインぶりを見せ、ゴールデン・グローブ賞をはじめとする数々の主演女優賞を受賞。アカデミー賞でも堂々の2度目の受賞を果たした。 そしてもうひとり、忘れてならないのが、フランキーの唯一の友であり、マギーにハートのあるボクサーの素質を見出すスクラップを演じて4度目のアカデミー賞候補でついにオスカーを受賞したモーガン・フリーマンだ。彼の3度目のオスカー候補作『ショーシャンクの空に』と同様、物語はスクラップを語り部に進行していくが、そうした神の視点を持つキャラクターに、今回もフリーマンは抑制のきいた演技を見せ、唯一無比の存在感を発揮する。 F・X・トゥールの短編集「Rope Burns」におさめられた短編をベースに、セリフのひとつひとつが深い意味を持つ脚本を書きあげたのは、TVシリーズ「thirtysomething」でエミー賞、ヒューマニタス賞などを受賞し、映画デビュー作にあたる本作で、アカデミー賞候補にあがったポール・ハギス。スタッフには、撮影監督のトム・スターン以下、『ミスティック・リバー』を手がけたイーストウッド組のメンバーが集結。本作が記念すべき25本目の監督作となるイーストウッドを、力強くサポートしている。

by kounoproclimb | 2005-06-02 11:06 | その他
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