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○○から来た少年

けだるい平日の午後、ガラス越しに西日が差し込んで、頭が朦朧としながらもPCを入力していた。
ふと気がつくと目の前に少年が立っていた。
「初めてなんです。」
保護者か引率の先生がいないと一人では登れないことを説明する。

「じゃ、靴を見せてもらってもいいですか?」
最近、入荷したシューズの説明をして何足か履いてもらったら・・・・

「実は持ってきてるんです・・・・」
袋から取り出したそれはハイカットの赤い靴紐・・・・
今でこそめったに見かけないが一世を風靡したベストセラー
しかも殆ど新品だった。
この年頃の子はほとんど自分の意見をはっきりいえない。
大抵、引率の先生が一緒に説明しながら靴を選ぶというのが通例だ。
もともと靴オタクな僕が、三回りほど年の違う彼と意気投合するのに時間は掛からなかった。
ちょっとあまりにも可哀相なので、
「少しだけ遊んで行く?」
それから何を話したのかまったく憶えていない。
夕方になってばたばたと新規のお客さんがみえたのでその対応に追われ
気がつくと交代の時間になっていた。

僕の半ば予想どうり少年は忽然と姿を消した。
他のスタッフに聞いて回っても誰も彼のことを見ていないという。
最近起こったことを、フラッシュバックして思い返してみても
いろんな辻褄が合わない。
ただ、彼の座っていた場所だけがひんやりと冷たかった。
by kounoproclimb | 2008-08-02 22:54 | その他
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