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トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

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あの事故がおきてから、あっという間に一年が経ちました。
3月27日に神戸の登山研修所で行われた「トムラウシ遭難を考える」シンポジウムには残念ながら仕事で参加できなかったのでこの本の発刊を心待ちにしていたのです。
僅か一年で、発刊までこぎつけられたのも、単なるツアー会社が引き起こしたガイド付き登山というだけでなく、登山界全体の問題と捉えている出版社の危機意識でしょう。
本書は4人の専門家による共著でどこからでも読み始められます。
生存したガイドさんの一年を経て初めてのインタビューも圧巻です。
リスクマネジメントという観点からだけでも、是非いろんな方に読んでいただきたいです。


トムラウシ山遭難事故とは、2009年7月16日早朝から夕方にかけて北海道大雪山系トムラウシ山が悪天候に見舞われ、ツアーガイドを含む登山者9名が低体温症で死亡した事故である。夏山の遭難事故としては近年まれにみる数の死者を出した惨事となった。
同ツアーは旅行代理店アミューズトラベル社(本社:東京都千代田区)が主催したもので、トムラウシ山や旭岳などを2泊3日で縦走する予定であり、50~60代の客15人(男性5人(A、B、C、D、E)、女性10人(a、b、c、d、e、f、g、h、i、j))とガイド甲(ガイドリーダー)、乙(サブガイド)、丙(添乗員)の3人が参加していた。ガイドのうち甲、丙の2人は今回のコースは初めてだったという。





目次
第1章 大量遭難
     十五人の参加者と三人のガイド
     ツアー初日
     差が出た濡れ対策
     出発の判断
     異変の兆候
     足並みの乱れ
     一気に進んだ低体温症
     介抱か下山か
     決死の下山
     遅すぎた救助要請
     喜びのない生還

第2章 証言
     面識のなかった三人のガイド
     なぜ出発を強行したのか
     聞けなかった「引き返そう」のひとこと
     支えてくれた人たちのありがたさ

第3章 気象遭難
     遭難時の気象概況
     トムラウシ山周辺の気象状況
     遭難時の気象の特異性
     気象から見たトムラウシ山遭難の問題点

第4章 低体温症
     低体温症との接点
     低体温症の基礎
     トムラウシ山パーティの低体温症
     他パーティの低体温症
     低体温症の医学的考察
     多様な病態を示す低体温症

第5章 運動生理学
     気象的な問題
     身体特性の問題
     体力の問題
     エネルギーの消費量と摂取量
     事故防止に向けた提言

第6章 ツアー登山
     ツアー会社は山のリスクを認識していたか
     安全配慮義務と旅程保証義務
     ガイドの資格問題
     商品に反映されるツアー客のレベル
     それでもツアー登山に参加するワケ
     ツアー登山と自己責任

by kounoproclimb | 2010-08-30 14:22 | 本,雑誌
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