クライマーに限らずすべてのアスリートにとってどれぐらいのプロテインを摂取すればよいのかは悩ましいところですが、www.climbing.comに非常に興味深い記事が掲載されていたので、翻訳してみました(部分的にわかりにくいところは意訳しています。また誤訳があるかもしれません。記事内容の妥当性は関知しません)。ちなみに「プロテイン(Protein)」は「タンパク質」と訳出せずに、そのまま「プロテイン」としています。プロテインとタンパク質が違うものだと思っている人が意外に多いですが。 ここで訳しているのはPart1だけであり、興味のある人はPart2、Part3も読んでみてください。 ● クライミング栄養学:クライマーに必要なプロテイン 問題となるのは、他の主要な栄養素とプロテインの働きはまったく異なるということです。脂肪や炭水化物は、分解される過程でエネルギーを供給するため仕組みを把握しやすいのですが、プロテインの大部分はそうではありません。熱量計で計った場合に、酸素によって4キロ・カロリーのエネルギーを生み出すという意味でプロテインにはカロリーが存在します(1グラムのガソリンは10.5キロ・カロリーのエネルギーを生み出す)。しかし日常の私たちの体は、脂肪や炭水化物を熱源にするのと同じようにプロテインを熱源にするわけではありません。確かに、プロテインから炭水化物へは、限定的ないくらかの変換があり、ポタポタと水が滴り落ちるようにエネルギーを供給します。しかしプロテインの大部分は、体そのものを造って維持するために使われます。そのプロセスは「摂取カロリーと消費カロリー」のような線形的な方程式に従うわけではありません。このことがプロテインの理解を困難にしているのです。 過去においては、必要なプロテイン量を算出する目安として体重が利用されてきました。例えば、「激しいスポーツをするなら体重キロ・グラム当たり1.4~2.0グラムのプロテインを摂取しよう」というような指標があります。この「キロ・グラムあたりのグラム数」というモデルは、私たちの健康に必要な「最低量」のプロテインを見積もるのであれば、信頼できる正しいモデルです(それはキロ・グラムあたり0.8グラムもしくは体重を3で割ったオンス値となります)。しかし目的が異なるのであれば、まったく別の指標が必要となるでしょう。現在、私たちは、アスリートのために、この「キロ・グラムあたりのグラム数」モデルから離れ、プロテイン摂取量の「新しい」モデルを採用すべき十分な研究結果を得ています。なぜ(新しいモデルを採用すべき)なのかを見ていきましょう。 ● 偶然の正確さ そして、もしこれぐらいのプロテインを摂取しているのであれば、それは多過ぎず、少な過ぎない、プロテインの「理想的な量」と呼べる、より新しいモデルに非常に近いことになるのです。しかしながら、 「より新しいモデル」では、体重や性別はもちろん、どのようなタイプのアスリートであるかということさえ、ほとんど気にする必要はありません。なぜならこれらの要因はすべて、プロテインの基本的な代謝作用においてまったく関係がないからです。 仮にあなたが100ポンド(約45kg)の痩せ型体型であっても、あるいは300ポンド(約136kg)のがっしりとした体型であっても、ほとんど完全に同じ方法で体は食べ物を消化吸収し、得られたプロテインに対して生理反応することになるからです。これは、直感に反すると思われることは理解できますし、典型的な男性アスリートは典型的な女性アスリートよりも筋肉隆々としていることもケース・スタディから明白です。しかしケース・スタディは、場合によってはまったく参考にならない、ということもまた事実なのです。「プロテインの量」と「刺激のタイプ(たとえば運動のような)」の両要因が与えられた場合に、すべての人はプロテインに対してほぼ正確に同じ生理的反応を生じるのです。男性は女性よりもテストステロンの基準値レベルが高いため、最終的に男性は女性よりも、より筋肉質になるようであり、それは長期間にわたって男性の体をより筋肉質へと成長させていく傾向があります(これは思春期にはとりわけ顕著です)。しかし、単に同じ練習を行い、同じ量のプロテインを摂取した何人かの男女を調査した時、 短期間においては筋肉とタンパク質の合成に違いがないことがわかります。 では、「キロ・グラムあたりのグラム数」モデルが、なぜおおよそ正確になるのかについての説明はこれぐらいにして、新しいモデルそのものを説明していきましょう。 ● 新しいプロテイン・モデル 正直に言えば、実際には「新しいプロテイン・モデル」というのは存在しません。Googleで検索しても何も見つからないでしょう。 本当のところは、単にあなたの興味を煽るために私がその用語を作り上げたのであり、実際にはそのような「新しいモデル」というものは存在しません。しかし、私たちの最近の研究から得られた結果を考えた場合、それはまさに私が推奨しようとしているものに非常に近いモデルがあるだろうと、程なく確信することになるでしょう。ここまで十分に引っ張ってきたと思うので、それがなぜなのかすぐに説明することにします。 新しい「タンパク質モデル」は以下となります 「身長や体重、性別にかかわらず、すべてのアスリート(クライマーを含む)は毎日、約3時間区切りで均等に20グラムずつ分けられた120グラムのプロテイン取得を目標にすべきである」 その単純なモデルは、これですべてです。 男性であろうが女性であろうが、痩せていようが筋骨隆々だろうが、競技種目がクライミング、バイク、スイミング、バーベル上げだろうが、それらはまったく重要ではありません。すべての人は、3時間ごと6回の食事による、まったく同量のプロテインから恩恵を得ることができるのです。あるいは別の観点から言うなら、あなたはすでに毎日十分な量のプロテインを摂っているかもしれませんが、適切なタイミングで摂取できていないかもしれないということです。 この新しいモデルによって、決して大きな(モデルとの)ギャップを抱えることなく、一日に数回プロテインを大量摂取しなくてもいいように、プロテインの摂取方法を変えることになるでしょう。一日の初めにプロテインの豊富な朝食を食べ、午前中のどこかでプロテインの豊富な軽食を取り、そしてプロテインの豊富な昼食を食べるようにしましょう。午後には、別のプロテインの豊富な軽食を楽しみ、プロテインが豊富な夕食を食べ、そして寝る直前に最後のプロテインの豊富な軽食を取ってください。これらの食事すべてにおいて「プロテインの豊富」という言葉が表すのは「20グラムのプロテイン」という意味であり、これは普段あなたが昼食や夕食で摂取する(プロテイン量)よりもはるかに少なく、他の食事や軽食で摂取する量よりは、はるかに多い数字です。 簡単でしょう? ひょっとして簡単すぎましたか? あるいは私の言うことを信じないかもしれませんね。いいでしょう、では「なぜこれが正しいのか」、私が示すことのできる「科学」に目を向けていくことにします。 ● 筋肉とタンパク質の合成を最大化しよう! 例えば、この研究(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24257722)では、20グラムと40グラムのホエイ・プロテインが実際にはまったく同じ「筋肉とプロテインの合成」をもたらすことを示しています。 あるいはこの研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19056590)では、卵のプロテインを使った実験で、20グラムだろうが40グラムだろうが、筋肉とプロテインの合成はほとんど正確に同じであるということを示しています。 それからこちらの研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19699838)からわかるのは、12オンスの赤身の牛挽肉 (90グラムのプロテイン)を食べることと、たった4オンスの赤身の牛挽肉(30グラムのプロテイン)を食べることは、結果としてまったく同じ筋肉とプロテインの合成をもたらすということです。 さらに実際には、統計的に有意ではないかもしれないものの、赤身の牛挽肉を食べれば食べるほど、結果として筋肉とプロテインの合成が低下していくということを最後の研究は示しています。 これらの実験は、混成グループ(若い人、高齢の人、男性、女性、トレーニングしている人、していない人)に与えられた3種類のまったく異なるプロテインによるものですが、いずれの実験結果も実質的には同じことを示しており、それは20グラムのプロテインこそが筋肉とプロテインの合成を最大限に促すということです。唯一検証すべき点として、これら(実験で使用した)すべてのプロテインは高品質なプロテインであり、つまり必須アミノ酸を豊富に含んでいるということです。しかしこれは問題にはなりませんよね? 食べるものの選択肢が限られている完全菜食主義者でさえ、食事において高品質から低品質まで、さまざまなプロテインを選択することができるからです。 (私たちは他の記事でプロテインの品質の理論を取り上げますが、現時点で知っておく必要があるのは、最高品質のプロテイン源は、まさにあなたがすでに考えているものだけだということです。つまり肉や魚、乳製品、卵、大豆、そして米と豆です) 筋肉を「最大限に成長させる」ために、どれぐらいのプロテインが必要かということに関する膨大な数の研究のすべてが概ね同じ結論に達していおり、これこそが私の20グラムという値の根拠なのです。その一方でまた、先ほど2つの研究は、10グラムのプロテイン摂取では、筋肉とプロテインの合成を促進するための効果が著しく低いということも示しています。したがって(筋肉とプロテインの合成の効果を示す)曲線は、20グラム辺りまでは急カーブで上昇することになり、そこからは横ばいになるということです(数学に詳しいなら対数的と言えばわかるでしょう) 。それゆえに20グラムというのは、筋肉とプロテインの合成を最大値の90%以上に十分に引き上げるための特別な値であり、それ以上の摂取はプロテインの無駄遣いになるだけです。 では、「3時間ごとに」という部分についてはどうでしょう? この質問に答えるためには別の研究結果も参照する必要があります。そしてその後、私たちが上記の研究から学んだことをベースに、さらにいくつかの手順を踏んで1つの理論を取り上げることにしましょう。私が言及したこの別の研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23459753)の目的は、同量のプロテインが、筋肉との総合的な合成に影響を与えるタイミングを計測することです。そのため、研究者たちは実験参加者全員に対して全部で80グラムのホエイ・プロテインを用意し、摂取するタイミングと、1回に摂取する量だけを変えて実験を行いました。その内容は以下のとおりです: ・ グループ1は10グラムのプロテインを1.5時間ごとに8回摂取 験結果はおそらく予想通りだと思いますが、グループ2はグループ1およびグループ3よりも著しく有意に筋肉とプロテインの合成をもたらすことになりました(12時間にわたる平均値)。「3時間ごとに20グラム」というルールが信頼に足るための、強固な指標がこの実験からすでに出ているわけですが、万全を期すために、さらにもう少し見ていきましょう。 上記研究について指摘されるかもしれない点があるとすれば、ホエイは「(吸収が) 速い」プロテインとしてよく知られているということです。消化・吸収の速さという観点からは、ホエイにかなうものはほとんどありません。ホエイは、私たちの体に非常に速く吸収されるというこの的確な理由から、実際にプロテインの王様と考えられています。しかし、この絶対君主ホエイの弱点として、アミノ酸が消えてしまうのもまた非常に速いということが挙げられます。ホエイのアミノ酸は血液中を駆け巡り、わずか数時間後には消失してしまうのです。 一方で、ゆっくりと消化されるプロテインは、より長時間にわたって血中アミノ酸を高レベルに保ち続けます。このことを考えると、遅いプロテインと比べた場合にホエイの消化スピードの速さは 、より短い間隔で摂取することが確実に有利に働くのであり、それが、グループ2がグループ3よりもはるかに好成績だったひとつの理由であると思うかもしれません。これはもっともらしい仮説に見えますが、他の研究から学んだことも検討してみましょう。 上記の3つの研究のうち2つは卵と牛肉の 「(消化の)遅い」プロテインを使用しています。卵と牛肉の実験では、20グラムよりも多くのプロテインを投与したにもかかわらず、筋肉とプロテインの合成をより大きなレベルに引き上げることはできませんでした。それは、4時間(卵)もしくは5時間(牛肉)にわたって計測したときでさえ結果は同じでした。もし「遅いプロテイン」が、長時間に渡って筋肉とプロテインの合成を高めるのに、より優れていたのであれば、これらの「遅いプロテイン」の効果を、4~5時間という長時間に渡ってずっと観測することができたでしょう。しかしながら、そのような結果は観測されませんでした。代わりに、余分に与えられたプロテインから生成されたすべての余分なアミノ酸は、単に酸化してエネルギーに変換され、あるいは不要な窒素へと変換されただけでした。これら20グラムを超える余分な「遅いプロテイン」にも価値があるにもかかわらず、それらは摂取されていないのと同じかもしれないということです。 したがって、上記研究から学んだことをすべて併せて考えると、合理的な確実性をもって以下のように言うことができます。 1. 食事において高品質のプロテインを20グラム以上摂取する必要はありません。 そしてこのことが、120グラムという特別な数字を私たちにもたらすことになります。なぜなら、真夜中に軽食を食べるのでなければ、3時間ごとに分けられた6回の食事時間だけを確保すればよいからです(つまり7時、10時、13時、16時、19時、22時 ― 15時間における6回の食事です) ● パート1の要約 「1日に20グラムずつ3時間ごとの6回の食事に分けた120グラムのプロテイン」 この理論には、実際にはいくつかの反論やちょっとした突込みどころもありますが、食事におけるプロテインの潜在力を最大限に引き出すためには、このとても基本的な理論だけを知っておけばよいということです。次のいくつかのパートでは、この推奨理論の残りの部分を理解できるように、反論や些細な点を詳細に検討していきましょう。しかしここで読むのを止めるなら(そしてアドバイスにしたがうなら)、それでもかまわないでしょう。
by kounoproclimb
| 2018-07-06 14:16
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