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転生

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某雑誌の書評を見てこの本を知った。
黄金色のミイラが現世に蘇るというあらすじを聞いただけでも
荒唐無稽な展開はSF小説そのものである。
しかし、2007年に発表されたこの本はその後のチベット情勢をずばり予言しているようで
そら恐ろしい。
そういえば日本の小説界からSFというジャンルがなくなってしまって久しい。
SFと聞いただけで非現実的で内容がないと判断されてしまうからなのか?
(宮部みゆきの超能力者のシリーズなど完全に其のジャンルに入ると思うのですが・・・)

ストーリー(「BOOK」データベースより)
謎の死から十数年、チベット・タシルンポ寺院霊塔で、突如金色のミイラ、パンチェンラマ十世が甦った。中国政府に虐げられたチベット人民は救いを求めるが、肝心のラマは食べ物と女にうつつを抜かし、かつての高僧とは別人のよう。寺院の小僧・ロプサンは、何の因果かラマのインド亡命という危険な旅に付き合うはめになって…。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
篠田 節子
1955年東京都生まれ。東京学芸大学卒。市役所勤務を経て、1990年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。テーマの大胆さとスケールの大きな物語性で注目を集める。1997年には『ゴサインタン―神の座』(双葉社)で山本周五郎賞を、『女たちのジハード』(集英社)で直木賞を連続受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


後半になって、パンチェンラマ一行が日本の某国営放送のTVクルーと遭遇するところが痛快である。
チベットに放棄された核汚染と中国当局の国家的陰謀を全世界に知らせて欲しいと叫ぶパンチェンラマと世界中を震撼させる大スクープを前に腰抜けになって自己保身にはしるディレクター
 
「俺たちがやってるのは報道じゃなくてだな、日本のお茶の間に、古き良き日本を彷彿とさせる貧しくとも美しい山村や、歴史ロマン溢れる草原と砂漠の風景を届けるのが目的・・」
「あんたはもう死んでるからいいけどさ、俺たちには日本での生活があるのよ。」

チベットに関する問題は凄く重いテーマなんだけどお茶目なミイラと全編にちりばめられたユーモアがこの作品を軽妙に仕上げている。
他にもこの作者の作品を何冊か読んでみた。
もっと骨太で本格的な作品がよければブータンを舞台にした『弥勒』がお勧めかもしれない。
by kounoproclimb | 2008-12-30 10:17
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